事例の数え方で悩む企業担当者へ:「導入事例」の正しい数え方と整理法

企業が自社商品やサービスの導入事例を制作する際、「事例数をどうカウントすればよいか分からない」という悩みは非常に多く見られます。

たとえば、同じ企業に複数回導入していたり、複数サービスを同時に提供していたりする場合、どこまでを1件とすべきかで担当者間で意見が分かれることも少なくありません。

また、曖昧な数え方で作られた事例資料は、社内での整合性を欠くだけでなく、取引先やパートナーからの信頼性を損なう原因にもなりえます。

この記事では、導入事例の数え方において押さえておくべきルールや判断基準、社内ルールの整備ポイントまでを解説していきます。


目次

事例の数え方で社内が混乱する原因とは

導入事例の数え方に明確なルールがないと、社内での認識がバラバラになり、資料の整合性が失われる事態が発生します。

特に複数の営業担当者や広報担当が関与する場合、同じ事例を1件と数えるか、複数件と捉えるかで意見が分かれることがよくあります。

その結果、事例集や社内報告資料にばらつきが生じ、上層部や他部門、さらには顧客にまで混乱を与えてしまう可能性があります。

混乱を防ぐためには、具体的な数え方ルールとそれを共有・運用する仕組みづくりが不可欠です。

現場で起きがちなカウントミスの具体例

現場では、同一企業の継続利用を1件で済ませてしまう、複数のサービス導入を1事例にまとめてしまうなど、さまざまなカウントミスが発生しています。

たとえば、3年連続で利用されているにもかかわらず1件としてカウントしてしまうと、実績としての積み重ねが伝わりづらくなります。

一方で、ちょっとした機能追加を別事例としてカウントしてしまうと、逆に水増しと取られる恐れもあります。

このようなミスは、事例の単位に関する共通認識がないことが原因であり、明確なルール整備が必要です。

継続契約の扱いに関する混乱例

月次契約のアップデートは別事例?

月次で契約更新をしている顧客に対し、毎月のレポートや機能追加があるたびに新しい事例として扱うのは妥当ではありません。

しかし、アップグレードが大きく内容を変えるものであれば、別事例として扱える可能性もあります。

その線引きをどこに置くかが、社内で統一されていないと混乱のもとになります。

判断基準を事前に明文化しておくことが重要です。

年間契約内での機能追加はどうカウント?

年間契約中に追加された機能やモジュールを、別事例としてカウントするかどうかは内容に依存します。

根本的なソリューションの変化がある場合は分けて良いケースもありますが、単なる機能強化であれば同一事例に含めるのが妥当です。

顧客との成果報告や社内の営業資料で混乱しないよう、判断指針を設けることが望ましいでしょう。


複数部署に提供している場合の扱い

同一企業であっても、異なる部署に異なるタイミングで製品・サービスを導入している場合、それぞれを別事例としてカウントすべきかの判断が分かれることがあります。

たとえば、営業部に導入後、半年後に人事部にも展開された場合、それぞれの課題や目的が異なっていれば、別件としてカウントするのが理にかなっています。

しかし、同じソリューションを全社展開した一連の流れとして捉えるなら、1件としてまとめる方が妥当な場合もあります。

部署単位での明確な基準を設けることで、こうした判断ミスを減らすことができます。

部署単位での導入を別事例にできるのか

判断の分かれ目は「導入目的」と「成果の独立性」にあります。

目的がまったく異なり、それぞれで独自の成果が出ているのであれば、別の事例として扱うことで資料の説得力が高まります。

一方、同じ課題を全社的に解決するための導入であれば、1件として一貫したストーリーで伝える方が効果的です。

社内での合意形成が重要な理由

このような微妙な判断には社内での合意形成が不可欠です。

営業部、広報部、マーケティング部など複数の関係者が同じ基準で理解・運用していなければ、情報のズレや認識違いが発生しやすくなります。

基準の共有と定期的な確認ミーティングが、安定的な運用につながります。

ルールがないとどんなリスクがあるか

ルールのないまま事例数を積み上げてしまうと、結果的に資料の整合性が取れなくなり、社外的な信頼を損ねるリスクが生じます。

営業資料とIR資料、Webサイトで表示される事例件数が異なっていた場合、取引先に「水増しされているのでは」と不信感を与えることにもつながります。

ルール整備は単なる内部効率化の問題ではなく、信頼維持のための重要な取り組みです。

資料の整合性が崩れ営業に悪影響

営業現場では「導入実績100社」と記載した資料と「導入事例80件」と表記したWebページの矛盾が商談を難航させることがあります。

見込み顧客が不信感を抱かないよう、各チャネルでの表記は一致させるべきです。

パートナー企業との認識ズレが発生

共に事例を展開するパートナー企業が異なる基準でカウントしていると、共同資料での数字が合わず信用失墜の原因になります。

事前にガイドラインを共有しておくことが重要です。

導入事例の正しい数え方の基本ルール

導入事例の正しい数え方の基本ルール

導入事例のカウントルールを定めるには、まず「何を1件とみなすか」の基準を明確にする必要があります。

一般的には顧客企業単位でカウントするのが基本ですが、複数のサービスを提供している場合や、再契約・継続利用がある場合は判断が難しくなります。

また、成果や導入の文脈によっては同一企業でも複数件とする方が効果的な場合もあります。

以下で基本的なルールと実務上のポイントを具体的に見ていきましょう。

顧客単位で数える際のポイント

顧客企業単位でカウントする場合は、関連会社やグループ会社との区別も含めて明確に定義する必要があります。

同じグループでも法人が異なる場合は別件と扱うことが多いですが、一貫したサービス提供や担当部署が共通の場合は1件とすることもあります。

また、営業管理システムでの顧客コードを統一しておくことで、重複カウントを避けられます。

本社・子会社・関連会社の扱い

本社と子会社それぞれに導入した場合、法人が異なれば原則別カウントが妥当です。

ただし、同一の意思決定で導入がなされた場合には1件として扱うケースもあるため、事前に方針を決めておくべきです。

企業名の一貫性を担保する工夫

同一企業に異なる名称(略称や旧社名)で登録されていると、重複カウントの原因になります。

企業名やコードの一元化を図るために、マスタ管理の徹底が求められます。

サービス単位でカウントする場合の注意点

サービスごとの成果が明確に分かれている場合、同一企業への複数導入を別件とすることで、事例としての活用幅が広がります。

一方で、課題が共通しており、複数のサービスが一連のソリューションとして導入された場合には、1件にまとめるのが自然です。

製品ラインのバージョン違いの扱い

バージョン違いの製品(例:SaaSのv1からv2への移行)については、アップグレードとして1件と扱うのが通例です。

ただし、v1とv2で用途や導入目的が異なる場合は、分割カウントの検討余地があります。

契約金額での区別は妥当か?

契約金額の違いをもって事例を分けるのは原則避けるべきですが、大きく契約内容が異なる場合には検討が必要です。

たとえば、初回契約は10万円規模、再契約で1000万円規模となる場合は、別事例とした方がより有効活用できる可能性があります。

パターン別に見る事例数の扱いと数え方

パターン別に見る事例数の扱いと数え方

現場でよくある事例カウントの迷いどころを、具体的なパターン別に整理して紹介します。

導入事例のカウントルールを実務で正しく運用するには、こうしたパターンを事前に想定しておくことが重要です。

それぞれの状況ごとに、どのように数えるべきかの基準と判断のポイントを紹介します。

継続利用・アップセルの場合

契約が途切れず継続されている場合は、原則として1件とカウントすることが多いです。

しかし、アップセルにより新しい成果が得られたり、新たな課題解決が行われた場合は、別事例としてカウントする余地があります。

再契約や大幅な契約変更があるかどうかが判断材料になります。

同一製品の長期契約パターン

たとえば、3年間の継続契約であっても契約内容が変更されていなければ1件とみなされます。

年度ごとに成果が異なる場合には、社内での活用用途に応じて、カウントを分ける運用も考えられます。

契約期間の区切りで新事例にできるか

契約更新のタイミングで新たな導入ストーリーが生まれている場合、それを別事例として切り出すことで、より訴求力の高い資料が作成できます。

ただし、単なる継続ではなく、成果や活用範囲の変化があるかが分割の判断軸になります。

複数製品・サービスを導入されたケース

同じ顧客に対して複数の製品・サービスを提供している場合、それぞれの導入目的と成果に応じてカウントを分けることが推奨されます。

たとえば、1社で業務効率化のためのSaaSと、セキュリティ強化のためのツールを導入した場合は、目的が明確に分かれているため、別の事例として整理するのが妥当です。

成果ごとに事例を分けるべきか

提供した製品やサービスが異なる成果をもたらしている場合、それぞれのストーリーとして切り出すことで、資料としての価値が高まります。

異なる課題解決の文脈で分割可能

「業務効率化」と「法令遵守」といった異なる目的での導入であれば、別件としての整理が自然です。

同一企業への再アプローチで再契約したケース

いったん契約終了したのちに、再度契約を結んだ場合は、一般的に別の事例としてカウントできます。

再契約時の目的や提供内容が変わっている場合、なおさら分割する意味があります。

再契約のタイミングで判断が変わる

契約間に期間が空いている場合や、顧客担当者が変更されているような場合には、別のフェーズとして事例を構成できます。

同一年度内か否かで扱いを分ける

同一年度内で再契約された場合は、1件に統合されることもあります。

ただし、用途や成果が明確に分かれていれば、別事例としての価値があります。

事例数の信頼性と社内整備のすすめ

事例数の信頼性と社内整備のすすめ

導入事例の数え方を一貫性のあるルールで運用し、社内全体で共有・整備していくことは、企業の信頼性を高めるうえで欠かせない要素です。

事例数の信頼性が担保されていれば、営業活動だけでなく、広報やマーケティング活動にも強い説得力を与えることができます。

ここでは、社内でどのようにルールを整備し、実務で運用していくべきかを解説します。

数え方ガイドラインの作成ポイント

ガイドラインは誰が見ても理解できるように平易な言葉でまとめることが大切です。

判断に迷いやすい事例を具体的に例示し、○×形式で基準を提示することで、運用時の迷いを最小限に抑えることができます。

また、承認フローや見直しサイクルを盛り込むことで、形骸化を防ぐ効果も期待できます。

共通フォーマットと例示の準備

エクセルやスプレッドシートなどで使える共通フォーマットを用意し、項目を統一することで情報のブレを防げます。

例:「顧客名/導入年月/サービス名/導入目的/事例ID/件数カウント欄」などを統一管理

よくあるケースをマニュアル化

再契約や複数サービス導入といったパターンは特に誤差が出やすいため、代表的な例をマニュアルにまとめておくと便利です。

例:「同一企業に3つのサービス導入→事例数は3件。ただし同一プロジェクトであれば1件に統合」

事例データの保管と運用の工夫

事例情報は一元管理し、更新履歴やカウント履歴も記録することが望まれます。

CRM(顧客管理システム)やGoogleスプレッドシートなどを活用して、誰でもアクセスできる環境を整えることがポイントです。

CRMのフィールド設計と事例管理

CRM内に「事例カウントフラグ」や「分割ルール」などのフィールドを設けることで、登録時のミスを減らすことができます。

フィルターと分類による見やすさ向上

サービス別、業種別、成果別などでフィルターを設定しておけば、必要な事例をすぐに抽出できるため、営業資料作成時にも役立ちます。

事例数を正しく見せるためのプレゼン方法

事例数を正しく見せるためのプレゼン方法

導入事例の数え方が適切であっても、その見せ方を誤ると相手に不信感を与えることがあります。

プレゼン資料やWebサイトで事例数を表現する際は、正しい数値であることに加えて、その数値の根拠やカウント基準を明確に提示する工夫が必要です。

ここでは、事例数を適切かつ信頼性高く提示するためのプレゼン手法を解説します。

過度な「水増し」に見せないための注意点

たとえば「導入企業数100社」と「事例数150件」といった場合、受け手に「水増しされているのでは」という疑念を与える可能性があります。

それを防ぐためには、数値の定義をしっかり明記したり、注釈やグラフなどでカウント方法を伝えることが有効です。

件数と導入企業数を明確に分ける

「導入企業数」は企業単位の実績であり、「導入事例数」はプロジェクトやサービス単位での件数であることを説明しましょう。

視覚的な表現ルールの工夫

注釈付きのグラフや図表、実際の導入ストーリーと紐づける方法などが有効です。

信頼される事例資料の作り方

事例資料では、数字そのものではなく、その背景にある成果やストーリーが伝わることが大切です。

数値の整合性はもちろん、具体的な活用事例と連動させることで、説得力を増すことができます。

数値と本文の整合性を重視

数字で提示した件数と、紹介する事例本文が一致していなければ、信頼を失う結果になりかねません。

ストーリーの中で自然に件数を提示

「導入第1フェーズでは●●件」「再契約で●●件」など、数字の提示は本文中に自然に組み込むのが望ましいです。

まとめ:事例の数え方を明確にして信頼と成果につなげよう

事例数の数え方は、社内外の信頼構築や資料の整合性に大きな影響を与える重要なポイントです。

社内でルールを明文化し、共有・運用できる仕組みを整えることで、事例制作の質と活用力は大きく向上します。

誤解を招かず、正確でわかりやすい事例数を提示できるよう、社内基準の整備とプレゼン方法の工夫を徹底しましょう。

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