導入事例を外部に頼もうと決めたあとで迷いやすいのが、「どの会社に頼むか」よりも手前の「何を確かめてから頼むか」です。料金の見え方、取材のやり方、納品の形、修正の回数、使える範囲、納期の数え方は、会社ごとに書き方がそろっていません。
この記事では、導入事例の制作代行を頼む前に確かめたい6つのことを整理し、主要10社の公式サイトに載っている情報を同じ項目で並べました。発注先の候補を絞る前の下調べに使ってください。
目次
この記事の調べ方
- 調査時点は2026年10月3日です。
- 各社の公式サイト・サービスページ・料金ページに書かれている内容だけを使いました。比較サイトや広告の記載は使っていません。
- 各社への取材や問い合わせによる確認はしていません。書かれていない項目は「記載なし」としています。
- 料金はページの表記どおりに写し、税込・税抜の換算はしていません。
- 対象は、当サイトの「おすすめの導入事例制作サービス」で紹介していた会社のうち、導入事例の制作を専業または専用サービスとして公開している14社です。このうち4社は、調査時点で該当するサービスページを公式サイトで確認できなかったため、この表からもトップページの一覧からも外しました。
内容は調査時点のものです。実際に発注される際は、必ず各社の公式サイトで最新の条件をご確認ください。
導入事例の制作代行とは
導入事例の制作代行は、自社の商品やサービスを使っている顧客に取材し、導入前の課題・選んだ理由・導入後の変化を記事や資料にまとめる仕事を、外部の会社に任せることです。取材の段取り、質問の準備、取材、原稿、デザイン、確認のやり取り、納品までを一括で受ける会社が多く、写真撮影や動画、冊子の印刷まで扱う会社もあります。
社内で作る場合との大きな違いは、取材の質問づくりと、取材先・依頼主の確認を回す段取りを任せられることです。一方で、費用がかかることと、自社の商品や業界の事情を相手に伝える手間は残ります。
頼む前に確かめたい6つのこと
1. 料金の単位と、税込・税抜の扱い
料金は「1本あたり」「何本かのまとめ発注での1本あたり」「プランごと」と単位がばらばらです。10社のうち料金を公開していたのは8社で、残る2社は問い合わせや資料請求で案内する形でした。
注意したいのは税の扱いです。公開していた8社のうち、税込と明記していたのは1社、税別・税抜と明記していたのは2社で、5社は税込か税抜かが書かれていませんでした。見積もりを比べるときは、税の扱いと、何本からの価格かをそろえてから比べてください。
また、同じ会社でもサイトによって金額の表記が違う例がありました(ビズログのサービスサイトと、運営会社の自社サイト)。気になる場合は、どのページの価格かを伝えて確認するのが確実です。
2. 取材の方法と、撮影・交通費の扱い
オンライン取材だけで完結する会社、訪問取材を基本にする会社、プランで選べる会社に分かれます。訪問取材はその場の様子や写真が得られる一方、交通費や出張費が別にかかることがあります。実費とする会社、1名あたりの出張費を定めている会社、東京近郊までは料金に含む会社がありました。
プロのカメラマンによる撮影は、料金を公開していた4社がいずれも「5万円から」でした。オンライン取材の場合は、取材時の画面を写真の代わりに使う会社もあります。写真の見た目をどこまで求めるかで、総額が大きく変わります。
3. 納品の形式
Web記事(HTML)、PDF、印刷物、Wordなどの原稿データ、デザインの元データ(InDesignなど)、動画と、会社によって標準の納品物が違います。Web記事が標準でPDFはオプションという会社もあれば、PDFが標準でWeb用はオプションという会社もあります。
あとで自社で直したり別の資料に転用したりするつもりなら、元データが納品物に含まれるかを確かめておくと安心です。元データの買い取りを別料金にしている会社もありました。
4. 修正の回数と、超えたときの扱い
修正の回数は「2回まで」「プランによって1回・3回・5回」「回数によって費用は変わらない」「何度でも対応するが、増える場合は別見積もり」とさまざまです。回数を書いていない会社も3社ありました。
導入事例は、依頼主だけでなく取材先の確認も入るため、修正が想定より増えがちです。何回まで料金に含まれるか、取材先からの修正も回数に数えるかを、事前に確かめておきましょう。
5. 二次利用の範囲
完成した事例を、自社サイトだけでなく営業資料、展示会の配布物、広告のLP、メール配信などに使いたい場面は多いはずです。二次利用を明記していた会社の書き方は、「自由に活用できる」「著作権は発注者に帰属する」「マーケティング用途の範囲内で流用できる」「素材の二次利用は無料」「顧客の許可が取れれば可能」と幅があります。
動画は別オプションとしている会社や、二次利用について何も書いていない会社もありました。写真や図版も含めて使えるのか、取材先の許可が別に要るのかまで確かめておくと、あとで困りません。
6. 納期の数え方と、確認待ちの時間
納期は「取材から1か月」「依頼から2か月」「企画開始から初稿まで最短4週間」「取材から1〜2週間で原稿、2か月程度で印刷・納品」のように、どこから数えるかが会社ごとに違います。比べるときは起点をそろえてください。
もう一つ見落としやすいのが確認待ちの時間です。取材日程の調整や、取材先による原稿確認に時間がかかると2〜3か月になることがある、と明記している会社もありました。制作の速さとは別に、自社と取材先が確認にかける時間を見込んでおくと、公開したい時期に間に合わせやすくなります。
主要10社の公開情報の比較(2026年10月3日時点)
掲載順は当サイトの「おすすめの導入事例制作サービス」の紹介順に合わせています。各社を採点した評価ではありません。
| 会社・サービス | 料金(表記どおり) | 取材 | 納品形式 | 修正 | 二次利用 | 納期 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| フィールドエックス合同会社「CaseFactory」 ※当社が実際に発注した会社のため、リンクを設けています(詳細) |
3件まとめ発注で1件110,000円、6件で90,000円、12件で80,000円(税別)。PDF制作30,000円、撮影50,000円などのオプションあり | オンラインで完結(30〜60分程度)。撮影はオプション | HTMLのWeb記事(PDFはオプション) | 合計2回まで | 自社サイト掲載・営業資料などの二次利用は可 | 取材から標準1か月。日程調整や取材先の確認により2〜3か月かかる場合あり |
| 株式会社アーキテクチャー「ビズログ」 bzlog.jp |
取材・原稿・撮影・テンプレートレイアウトのプランが230,000円(税込)〜。自社サイト(architecture.co.jp)ではWord納品154,000円(税込)〜、レイアウト込み253,000円(税込)〜 | 訪問・オンラインどちらも可(1〜1.5時間程度)。プロカメラマンは50,000〜70,000円 | Word原稿、A4で2ページのPDF(Web用・印刷用) | サービスサイトに回数の記載なし(自社サイトでは2回が目安) | 営業資料として利用可。自社サイトでは著作権は発注者に帰属と記載 | 4〜7週間程度 |
| 株式会社SEデザイン sedesign.co.jp |
ライティングプラン200,000円〜、スタートプラン310,000円〜、プレミアムプラン400,000円〜(1本) | ライティングプランはオンラインのみ。上位プランは対面・オンライン、プロカメラマン撮影を含む | Web記事、PDF、DTPデータ、事例集、動画などに対応 | プランにより1回・3回・5回まで | 営業やナーチャリングでの活用は可 | 1.5〜2か月程度 |
| モジカク(会社概要の表記は株式会社KAAAN) mojikaku.co.jp |
ライト118,000円、ベーシック148,000円、プレミアム178,000円(1記事・税抜) | ライトはオンライン、ベーシックは対面・撮影込み、プレミアムはプロの撮影 | 記載なし | プランにより2回・4回・無制限 | ホワイトペーパーや営業資料などへの転用を提案(条件の記載なし) | 企画開始から初稿まで最短4週間 |
| 株式会社グラペイン g-jirei.com |
取材・ライティング(3,000字前後)150,000円〜、撮影50,000円〜、デザイン50,000円〜など。東京近郊までの交通費を含む | 導入先企業を訪問して取材・撮影 | 印刷物(500部から)、PDF。PowerPoint・Webページはオプション | 数回のチェックと修正(上限の記載なし) | テキスト・図版・写真の二次利用費は無料 | 取材から1〜2週間で原稿、2か月程度で印刷・納品 |
| ISBマーケティング株式会社 isbm.jp |
要見積もり | オンライン取材に対応。インタビュー動画にも対応 | 記載なし | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
| ノーバジェット株式会社 nobudget.jp |
原稿制作120,000円〜、レイアウト込み150,000円〜、動画込み650,000円〜(参考価格)。プロカメラマン50,000円〜 | 現地またはオンライン(1〜2時間)。取材はオンラインで撮影のみ現地も可 | Word・PDF・動画など。作成元データも納品 | 回数によって費用は変わらない | マーケティング用途の範囲内で流用可 | 依頼からおよそ2か月〜、取材からおよそ1か月 |
| トライベクトル株式会社 trivector.co.jp |
ライト18万円、スタンダード20万円、プレミアム25万円、動画60万円。取材の交通費は実費 | 訪問(ライター・カメラマンが参加) | InDesignの元データとPDF(動画はmp4) | 記事は何度でも対応、増える場合は別見積もり(動画は2回まで) | 動画は別オプションで可。記事は記載なし | 初校は1週間〜10営業日以内 |
| テクノポート株式会社 writing.techport.co.jp |
資料請求で案内 | 記載なし | HTMLやWordPressでの掲載にも対応 | 記載なし | 顧客の許可が取れれば可 | 記載なし |
| 株式会社シーラベル「マーカス」 marketing.clabel.jp |
オンラインインタビュー15万円〜(1記事)、インタビュー動画80万円〜 | 記事はオンライン、動画はオフライン | 記事・動画(形式の記載なし) | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
表のうちリンクを設けているのは、当社が実際に発注して制作の流れを確かめたCaseFactoryだけです。発注の経緯と進め方は、下の「当社が実際に発注して分かったこと」で紹介しています。
表の内容は各社の公式ページの記載にもとづきます。記載の変更や誤りにお気づきの場合は、運営者情報に記載の窓口までご連絡ください。
当社が実際に発注して分かったこと
当社(株式会社トビバコ)は、表の1番目に載せているフィールドエックス合同会社の「CaseFactory」に、自社の導入事例3本をまとめて依頼しました。完成した事例は当社サイトの顧客事例で公開しています。発注者として経験したことを、上の6項目と照らし合わせながら書いておきます。
選んだ理由
- マーケティングの目線でまとめてもらえること:当社の課題はリード獲得でした。記事を作るだけなら社内でもできますが、当社の強みや選ばれる理由をマーケティングの目線で整理してもらえる点に価値を感じました。運営母体がBtoBマーケティングの会社であることにも安心感がありました。
- 社内では前に進まないと分かっていたこと:当社もコンテンツは作っていますが、導入事例を社内で進めると日々の業務に押されて結局進まないことが目に見えていました。
- 料金:価格が安く、最初の一歩を踏み出しやすかったことも決め手の一つです。
進め方
- 事前のヒアリング(オンライン・60分):当社の強みを聞き出してもらい、導入事例で何を訴えるべきかを整理してもらいました。取材というより、マーケティングの相談をしている時間に近い印象です。
- 取材方針と質問項目の共有:本番の前に、取材の方針を文章にまとめたものと、取材で聞く項目を受け取りました。
- 本番の取材(オンライン・60分):当社がお客様と日程を調整し、オンラインで取材してもらいました。お客様が楽しそうに話してくださり、普段は聞く機会のなかった「当社を選んだ理由」や「満足している点」を言葉にしていただけました。当社の今後のマーケティングにも役立つ時間になりました。
やってみて分かったこと
- 期間は「確認待ち」で延びた:1本目の納品が2024年11月中旬、3本目の完了が2025年3月下旬で、3本がそろうまでにおよそ4か月半かかりました。長かったのは制作の作業そのものより、取材先(当社のお客様)による原稿の確認と、掲載する写真の用意を待つ時間です。確認が止まっている間は、制作会社の担当者から状況の問い合わせがありました。
- 取材先とのやり取りは発注者が間に入る:日程の調整、原稿の確認、写真の提供は、当社からお客様にお願いする形でした。発注する側も、お客様にお願いする時期と回数を見込んでおく必要があります。
- 納品はPDFとWeb記事のデータ一式:PDF版と、Web記事版のファイル一式(ZIP)を受け取り、自社サイトへの掲載は当社で行いました。自社のサイトに載せる作業を誰が行うかは、事前に決めておくと迷いません。
- 納品後の小さな修正にも対応してもらえた:納品後に記事の末尾の住所表記の修正をお願いし、直したものを受け取りました。
取材を任せる相手を見るときのポイント
料金や条件が同じくらいでも、仕上がりを分けるのは取材です。候補の会社に問い合わせるときは、次の点を聞いてみると違いが見えます。
- 質問をどう作るか:「導入前の課題」「選んだ理由」「導入後の変化」といった定番の項目を、事前に依頼主とすり合わせて自社向けに直してくれるか。
- 業界の事情を知っているか:自社に近い業種の制作例があるか。専門用語や商習慣を理解していないと、読み手に違和感が残ります。
- 確認の段取りを持っているか:依頼主と取材先、それぞれの確認をいつ・何回行うかを最初に示してくれるか。
社内で作るか、外に頼むか
社内に取材や執筆に慣れた担当者がいて、取材先とのやり取りも自分たちで回せるなら、社内制作でも十分な事例は作れます。外に頼む価値が大きいのは、担当者が他の業務と兼任で手が回らない場合、過去に作った事例が営業で使われなかった場合、複数本をまとめて一定の品質でそろえたい場合です。
迷うときは、まず1〜3本を外に頼んで質問の作り方や確認の段取りを見たうえで、社内でどこまで担えるかを判断する方法もあります。まとめ発注で単価が下がる会社もあるため、本数の見込みと合わせて検討してください。
よくある質問
導入事例の制作代行の費用はどのくらいですか
今回の10社で公開されていた料金は、1本あたり8万円(まとめ発注の場合)から40万円以上までと幅がありました。写真撮影、デザイン、印刷、動画を加えると上がり、動画を含むプランは60万円台から80万円台でした。税の扱いや何本からの価格かが会社ごとに違うため、条件をそろえて比べてください。
取材はオンラインでも大丈夫ですか
オンライン取材に対応している会社は多く、オンラインだけで完結する会社もあります。現場の写真が欲しい場合は、取材はオンラインで行い、撮影だけ現地で行う方法を用意している会社もあります。
どのくらいの期間がかかりますか
公開されていた目安は、取材から1か月前後、依頼からだと2か月前後が中心でした。取材先の日程調整や原稿の確認に時間がかかると延びるため、公開したい時期から逆算して早めに相談するのがおすすめです。
まとめ
導入事例の制作代行は、料金の単位、取材の方法、納品の形、修正の回数、二次利用の範囲、納期の数え方が会社ごとに違います。候補を比べる前に、この6つを自社の条件として書き出しておくと、見積もりの比較も問い合わせもぐっと進めやすくなります。各社の一覧と選び方の基準は、当サイトのトップページ「おすすめの導入事例制作サービス」でも紹介しています。
調査時点:2026年10月3日(各社の公式サイトの記載にもとづく)